加害恐怖の認知行動療法6

加害恐怖の認知行動療法6

・加害恐怖の認知行動療法⑥―ノーマライゼーションー

加害恐怖は健康な人々のなかでも浮かんでいる 前述のように、最近の研究では強迫観念と同じような思考は、実は健常者でも体験していることがわかってきました。これは多くの強迫症研究においても実証されており、「強迫観念と同じような内容の考えは、健常者でも浮かんでいる」というのは定説となってきています。例えば、精神疾患のない健康な人々100人を対象にした調査結果、「自分が本当はとても好きな相手に対して、強い怒りを感じることがある。」という人は60%、「本当はそんなこと考えたくないのに、ときどきよくないことを考えることがある」という人は50%、「車を運転するときは、事故を起こして人に怪我をさせることを想像してしまう」という人は40%ほど、「愛している相手に対して、たまに憎しみの感情が湧くことがある」という人は40%ほどいたという結果がでています。

 

このように、加害恐怖の人にみられる考えは、強迫症でない健康な人々にも普通にみられます。つまり、強迫観念のような考えが浮かぶことは自然なことであり、それ自体が異常ではないということです。これは専門家のあいだでは、とても常識的な見解となっております。つまり、暴力的で不道徳な考えが浮かんでしまうという体験は、ノーマルなことなのです。