加害恐怖の認知行動療法8

加害恐怖の認知行動療法8

・加害恐怖の認知行動療法⑧―ノーマライゼーションー

健康な人を対象にした調査では、「自分が本当はとても好きな相手に対して、ときどき強い怒りを感じることがある」に対して、63%が「はい」と答えています。「本当はそんなこと考えたくないのに、ときどきよくないことを考えることがある」に対しては、48%が「はい」と答えています。このように、「良くない考え」というのは誰にでもある体験といえるでしょう。しかし、全ての人がそのことを口にしないのはなぜでしょうか?その理由は以下の通りです。

多くの人々が自分の抱く「よくない考え」について、「そんな考えはバカバカしい」「深く考えるだけ無駄だ」と考え、深く追及していません。「車で人を跳ねてしまったらどうなるだろうか」という考えが浮かんでも、ほとんどの健康な人々は、「ばかばかしいな」と考え、数秒後にはすでに他の考えに移っており、すぐにそんな考えは忘れてしまいます。

これに対し、強迫症患者は「車で人を跳ねてしまったらどうなるだろう」という疑念を追い払うことができず、そのような考えが浮かんだ意味について、以下のように深く考え続けてしまいます。

・人をひき殺すことを自ら考えてしまった自分は何て恐ろしい人間なんだ

・このような考えが浮かぶのは、きっと私の性格に問題があるからなのだろう

・このような考えをもっていたら、そのうち本当にやってしまうかもしれない。

・こんなことを考える自分のことを信用していいのだろうか。

・こんなことを考えたり、実行しないように、私はあらゆる対処をすべできだ

 

上記のように、良くない考えが浮かんだことに対して深く考えすぎてしまうと強迫が悪化する原因になります。強迫症に対する認知行動療法では、様々なワークやディスカッションを通して、加害恐怖のような考えが浮かんでも、深く追求しないことができるように目指していきます。